何でも屋と偽りのお姫様~真実の愛を教えて~
「……」




胸が締め付けられる。


私は拓哉さんを裏切った。
それでも彼は……。


罪悪感でいっぱいになっていれば、力強く左手が握りしめられた。
ふと隣を見れば遥斗が真っ直ぐに私を見ている。


背中を押してくれるみたいに。
優しくて、真っ直ぐなその瞳に、私は軽く頷く。


もう……逃げない。


大丈夫。



自分に言い聞かせると固まっていた唇を無理やりこじ開けた。




「私は拓哉さんの事が本当に大好きでした。
何よりも大切で……誰を失ってでも傍にいたいって思っていました」



家族や友達、レイヤと縁を切る事で拓哉さんと一緒にいる道を選んだ。
拓哉さんを選んだことに後悔はないはずだった。
でも気付いたんだ……。



「誰かを失って、周りの人間を傷つけて得た幸せなんて……。
本当は意味がないって。
私にとっては家族も友達も大切なんだって!」



あの時は自分の事しか見えていなかった。
自分だけが幸せならいいって思ってたのかもしれない。
拓哉さんだけいればいいって、だけど違った。


周りの人を裏切って得た関係なんて……虚しいだけだった。
< 296 / 430 >

この作品をシェア

pagetop