何でも屋と偽りのお姫様~真実の愛を教えて~
「あの男は誰だ。
お前とはどういう関係だ」

「拓哉さん……手……血が……。
手当てしないと……」

「答えろ梓沙」



拓哉さんは私をドアに押し付けると冷たい目で言い放った。
答えないと離してはくれないだろう。
早く拓哉さんの手当てしないと、その一心で私は答える。



「あの人とはさっき出会ったばかりです。
だから関係も何もありません。それより手を……」



拓哉さんの手に触れようとすれば逆に掴まれてしまう。



「だったら何故スカウトなんてされるんだ?」

「わ……私にも分かりません」



掴まれた手首が痛い。
これだけ力が入れられるんだから骨に異常はないだろう。
少し安心していればグイッと顔を近づけられる。



「お前はあの男が好きなのか?」

「何を言ってるんですか!!
私が好きなのは拓哉さんです!」

「……だったら何故……俺を拒む」

「え……」



急に拓哉さんの顔が変わった。
さっきまで冷たい目で私を見下ろしていたのに……。
今は寂しそうな目で私を見ていた。


「キスを嫌がっただろう?」

「そ……それは……」


私にだって分からない。
何故、五十嵐さんの事で頭がいっぱいになったかなんて……。
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