何でも屋と偽りのお姫様~真実の愛を教えて~
息を切らせながら私はある物を探していた。


遥斗が“アレ”を持っていたら……。
あの人が九条さんだ。


遥斗に見つからない様に私は色々な場所を漁った。
机の上、棚の中、ベッドの下。
何処を探しても私が探しているモノは見つからなかった。


諦め掛けた時、ふと思いつく。


遥斗にとって1番大切な場所。
それは何でも屋だ。


親友の九条さんが悩んでいた事を知っていたのに何も出来なかった自分を戒める為、償う為に創った何でも屋。
その原点である九条さんとの思い出の品を置いておくなら……。


家ではなくて何でも屋なんじゃ……。
頭でそう思った瞬間、私は家を飛び出した。
階段で下の階に降り、事務所へと駆け込む。



「……」



そして導かれる様に遥斗のデスクへと向かった。


遥斗なら大切なモノはきっと身近な所に置く。
そして、いつまでも忘れない様に……。



ゴクリと息を呑んでデスクの引き出しの1番下をそっと開ける。
そこにはポツンと1つだけ……私が探していた物が寝転がっていた。
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