何でも屋と偽りのお姫様~真実の愛を教えて~
「聞きたくねぇ……」



震える声に私は胸が痛くなる。


遥斗のこんな顔が見たい訳じゃない。
ズカズカと土足で入っていい場所じゃないって事も分かってる。


だけど……。
もう……これ以上、遥斗に辛い想いをして欲しくない。


遥斗は自分を責め続けているけど……。
そんな必要どこにもない。


だって……。
遥斗も九条さんも……。
誰も悪くなんてないから……。


悪いのは……九条さんをそこまで追い詰めてしまった環境だ。


それを遥斗には分かって欲しい。



「大丈夫だよ」

「は……?」

「それは……私が言うべき事じゃないでしょ?」

「それって……」



遥斗の顔がゆっくりと上がり私の瞳を捕える。


遥斗の顔は何かを恐れているかの様だった。
私がこれから言う事を遥斗はもう分かっているんだ。
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