何でも屋と偽りのお姫様~真実の愛を教えて~
「……そうだな。
お前にココまで言われて逃げる訳にはいかねぇな」



ニッと歯を出して笑う遥斗の笑顔は、今までで見たどんな笑顔よりも輝いて見えた。
でもすぐにその顔は哀しみに歪む。



「でもよ……。
俺……連絡先も何も知らねぇんだよな。
前のは変わっちまってて……」



その言葉に私は待ってましたと言わんばかりに顔を緩めた。
私の顔を見ながら遥斗は首を傾げる。



「任せなさい!
ちゃんと分かってるから!」

「は……ははっ……。
流石……俺の女……」



苦笑い気味の遥斗を無視しながら私は鞄を漁る。



「そうだ、九条さんなんだけど実は……」



私の言葉を遮る様に着信が鳴り響いた。


タイミングよく鳴る電話に驚いていれば、遥斗に『出ろよ』と言われてしまった。



「もしもし」



相手を確認しずに電話に出れば思いがけない声が耳へと入ってくる。
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