何でも屋と偽りのお姫様~真実の愛を教えて~
『梓沙ちゃん!!』

「お……お義兄さん……!?」

『切らないで!!』



反射的に電話を切ろうとするが、慌てた声が聞こえ切るのを止める。


相当焦っているのか、いつものお義兄さんとは違う気がする。
そう呑気に思っていればとんでもない言葉が私の耳へと届けられた。



『拓哉が車に轢かれたんだ』



お義兄さんの言葉がグルグルと頭の中を回っていく。


轢かれた……?
どうして……?


頭が回らなくなり私は椅子から崩れ落ちてしまう。



「梓沙!?」



遥斗が私を支えてくれるが私は動揺してそれどころではなかった。


とにかく急いできて欲しいと言われ、どうしていいか分からなくなる。
病院の名前を言われたが私の頭は正常な働きをせず、ただ呆然と床に座り込んでいる事しか出来ない。



「何してんだお前は!!」



そんな時、隣から大声が聞こえてくる。
力なく振り向けば遥斗が怒った様に私を見ていた。
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