何でも屋と偽りのお姫様~真実の愛を教えて~
「あず……さ……?」



驚いた顔をする拓哉さんに近づき彼が座っているベッドのすぐ傍に立つ。



「……呼びましたか?」



わざと明るい声を出せば、私の体は勢いよくベッドへと倒れてしまう。
その理由は簡単だ。



「梓沙……会いたかった梓沙……」



拓哉さんが私の腕を引っ張ったから。


そして私はいとも簡単に拓哉さんの腕の中へとおさまってしまう。
本当に怪我人なんだろうか、というくらいの強い力で抱きしめられる。


さっきまで暴れていた拓哉さんは嘘の様に静かになっていた。


ただ私を抱きしめながら、何度も繰り返し私の名前を呼んでいる。



「……拓哉さん、少し休んでください」

「……嫌だ」

「拓哉さん」



子供みたいに駄々をこねる拓哉さんを見たのは初めてだった。
戸惑っていれば拓哉さんは私の腕にしがみつきながら小さく呟いた。



「俺が寝れば……またお前はどこかに行ってしまう。
そんなの絶対に……嫌だ……」



拓哉さんの手は酷く震えていた。
それが怪我からのものなのか、哀しさからのものかは分からない。


でも……。
どっちにしろ……。


放って置ける訳がなかった。
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