何でも屋と偽りのお姫様~真実の愛を教えて~
「私はもうどこにも行きません」

「……嘘だろう……。
お前はそう言って……俺の前からいなくなった。
お前は俺を捨てて……他の男の所にっ……」



光が宿っていない冷たい目。

拓哉さんはそんな目で私を見ていた。


この目は私がさせたものだ。
拓哉さんを裏切って、遥斗を愛して……。
自分だけ幸せになろうとするなんて……ムシが好過ぎた。



「拓哉さん」



私は幸せになるべきじゃない。

幸せに何かなってはいけない。

少なくとも、拓哉さんがこの冷たい目から解放されるまでは……。



「私は貴方の傍にいます。
だから……安心して休んでください」

「いやだ……っ……」



拓哉さんの言葉を遮る様に私はその唇にキスを落とした。


これが私なりのケジメだ。


私は……。
拓哉さんと一緒に生きていく……。
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