何でも屋と偽りのお姫様～真実の愛を教えて～

「梓沙……？」

「……これじゃあ証拠になりませんか？」

「っ……」



拓哉さんは私を抱き寄せると耳元で小さく囁いた。



「信じていいのか……？
本当に……いなくならないか……？」



不安そうに震えるその声に、私は優しくしっかりと答えた。



「はい。
信じてください。
もう貴方の傍を離れたりなんかしない」

「梓沙……愛してる……」

「拓哉さん。
私も……愛しています」




私がそう答えれば拓哉さんは安心した様に目を閉じた。
直ぐに聞こえる小さな寝息が、彼の体の限界を物語っていた。
無理して動いたせいで体に負担を掛けたに違いない。
興奮状態で痛みを感じてない様に見えたが、車に轢かれて無事な訳がないもの。


私に抱き着きながら眠る拓哉さんの頭をそっと撫でる。



それと同時に私の瞳から、零れ落ちる様に涙が溢れ出てきた。


声を押し殺してなく私を……
お義兄さんも男の人たちも黙ったまま見つめていた。


きっと私の心情を察してくれたのかもしれない。


これから私が歩む道の辛さを……
言葉には出さないけど分かっていたのかもしれない……。