何でも屋と偽りのお姫様~真実の愛を教えて~
「何で……何でそんなに冷静なんですか……?」

「……」

「自分の息子が轢かれて……何で……」



震えた声は途中で途切れる。
不快な高い笑い声が私の言葉を消し去っていく。



「貴方は何を言っているの?
こんな子……息子でも何でもないわ」



低く冷たい声に、何も喋ることが出来ずにいれば追い打ちを掛ける様にお義母様は口を開いた。



「親に反抗して勝手に会社は創るは、貴方みたいな女に惚れこんでおかしくなるは……。
おまけに自分の社員に殺されそうになるは……。
こんな子、私の息子でも何でもない」



拓哉さんを見ながらそう言い切ると、再び私に目を向けた。



「でも、放って置く訳にはいかないのよ。
この子が変になれば柊家に迷惑が掛かる。
だから……貴方がしっかりと見張っていて頂戴。
貴方が傍にいればその子も満足でしょうから」



お義母様は自分が言いたい事だけを言い終えるとさっさと病室を出て行ってしまう。



「……何なのよ……」



私の小さな声は病室へと消えていく。


世間体ばかり気にして……
拓哉さんの事は心配じゃないって言うの?


柊家に迷惑が掛かる?
ふざけないでよ、そんな事よりもっと大切の事があるでしょ……?
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