何でも屋と偽りのお姫様~真実の愛を教えて~
「キミが拓哉と一緒にいる事を望んだのは俺なのに……。
胸が痛いんだ……」



お義兄さんの涙は私の心を表している様だった。


本当は私も泣きたい。
泣いて、全てを忘れ去りたい。


でも……
それじゃ駄目だから。


私は自分の決めた道を歩いていくんだ。
例え、間違っている道だとしても……。



「お義兄さん。
私は……貴方に言われたから拓哉さんと一緒にいる訳ではありません。
例え貴方が望まなくても、私は彼と生きる道を選んだと思います」

「でも……」

「もう……決めた事なんです」



私はそう言うと小さく笑みを浮かべる。
そしてポケットに手を突っ込み“ある物”を取り出した。
肌身離さず持っていた物を……。



「だから……お義兄さんも自分で決めた道を歩んでください」

「自分で決めた道……?」

「はい。
貴方は操り人形なんかじゃない!
貴方は自分の意思で生きていいんです」



お義兄さんの手に自分の手を重ね“ある物”をお義兄さんへと託した。
手を離す直前にぎゅっと力を籠めて……。
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