何でも屋と偽りのお姫様~真実の愛を教えて~
「送っていただいてありがとうございました」

「梓沙ちゃんキミは本当に……」

「では失礼します」



お義兄さんの言葉を無理やり遮り、私は病室へと入って行く。



「拓哉さん」

「……」



呼びかけても反応しない彼を見ながら私はふぅとタメ息をつく。
彼の寝顔は本当に穏やかだった。
暴れている時の面影なんか全くない。



「……あずさ……」

「あっ……起きましたか?お腹空いていませんか?」

「……梓沙」



私の腕はいきなり引っ張られる。
急に抱きしめられ、驚いていれば哀しそうな声が病室へと落とされた。



「もう……帰ってこないと思った」

「ど……どうしてですか……?」

「……いや……。
どうしてだろうな……」



力なく言うと拓哉さんは私の首筋に顔を埋めた。
私の存在を確かめるかの様に……。
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