何でも屋と偽りのお姫様～真実の愛を教えて～
何で……？
どうして……。


何度心に問いかけてもその答えは返ってこない。


だけど……。
私が出来る事は……やるべき事は……。


私は体中に咲いた紅い華を1つずつ指で辿っていく。
大切で……大好きな婚約者である拓哉さんを守る事が私のやるべき事だと思う。


例え……拓哉さんに壊されたとしても。
私が彼を守らなきゃ……彼自身が壊れてしまう。
私は拓哉さんが傷ついている姿を見たくない。
彼は上にいるべき人間だ。


自分にも他人にも厳しく、誰よりも努力している人間を認めてくれる人。
そんな彼だからこそ……自信を持って堂々と自分の道を歩んでほしい。
その手助けができるなら……私は……壊れたって構わない……。


でも……。
五十嵐さんの顔が……声が……頭から離れてくれない。
もう……2度と会う事がない人。
当たり前の事なのに、胸が苦しくなる。



「……何をしている？」

「……え？」



ズキリと痛む胸を抑えようとした時
低い声が横から聞こえてきた。


急いで振り向けばそこには腰にタオルを巻いた拓哉さんが立っていた。
シャワーを浴びに行ったはずの彼の体は全く濡れていなかった。
不思議に思って首を傾げれば拓哉さんは黙ったまま私の体を見ていた。
その視線を辿る様に私も目線を下げる。



「……きゃぁ！！」



私は大声で叫びながら急いでベッドに潜り込む。
なぜなら私は服を着ておらず全裸のまま立っていたから。
何で忘れていたのだろうか……。
恥ずかしさで潤む目を枕に押し付けていればゆっくりと足音が近づいてくるのが分かった。
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