何でも屋と偽りのお姫様~真実の愛を教えて~
そして私の対処も決まっていた。



「……」



私は拓哉さんに顔を向ける事はなくその場をそっと離れた。


もう慣れたはずなのに心は素直だ。
ズキズキと痛む胸が大丈夫ではないと叫んでいる。


好きな人が……拓哉さんが、他の女の子たちに囲まれて平気でいられる訳がない。


後ろを振り向けば女の子の集団が目に映った。
その中心にいるであろう拓哉さん。
彼は今も無表情を貫いているだろう。
どんなに囲まれたって触られたって拓哉さんは何とも思わない。


自意識過剰だが彼が愛しているのは私だから。
それは揺るがない事実だ。


でも……拓哉さんの心が女の子たちにはないからって……。
私が平気だという理由にはならない。



「……辛いな……」



思わず零れた言葉に私は苦笑いを浮かべた。


彼と付き合うという事は私の全てを捧げるという事だ。
拓哉さんの重荷にはなってはいけない。


私の行動1つが拓哉さんの名を汚す事だってある。


だから私は……今までの生活を捨て拓哉さんに相応しい女性になる事を選んだ。
それが彼と結ばれる為に出された条件だった。


彼のご両親はとても厳しい方だ。
柊財閥は拓哉さんのお兄さんが継いでいるが、息子である拓哉さんの交際相手が一般家庭の私だと言う事が気に食わなかったらしい。
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