何でも屋と偽りのお姫様～真実の愛を教えて～
過去を思い出した私は少し落ち込んでしまう。


楽しかった高校生時代。


人数こそ多くはなかったが信頼できる友達に囲まれていた生活は……。
今となってはもう遠い昔のこと。



「……」



考え込んでいた私だったが、視線を感じて顔を上げる。



「っ……遥斗……？」



少し離れた所にいたはずの遥斗が今は目の前に立っていた。
私を見下ろすその瞳は何故か哀しそうに揺れている。

何でそんな顔を……。
気になったと同時に私の胸がズキリと痛んだ。


な……なに？
痛む左胸を抑えようと手を動かせば、その手は遥斗によって掴まれていた。



「そんな顔……するんじゃねぇよ」

「え……」

「今にも泣きそうな顔してるぜ……お前」



遥斗はそう言うと空いている方の手で優しく私の頬を包み込んだ。
その大きな手にドキッとしてしまう。
細くて長い指が私の頬を優しく滑る。



「はると……」

「……」



揺れる瞳は私を離してはくれなかった。


逸らすことも許されず、私は遥斗を見続ける。


トクントクンと心臓が大きく音を立てる。

この胸の高鳴りは一体……。


考えていれば、吸い込まれるように私の体が動いた。
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