何でも屋と偽りのお姫様~真実の愛を教えて~
「んっ!?」



唇に感じる温もりに頭が真っ白になっていく。
優しく重なる私と遥斗の唇。


引き寄せられた体がいやに熱く感じる。


キスをしているんだってすぐに分かる。
柔らかくて温かい唇から遥斗の優しさが伝わってくる。


そんな甘いキスだった。



ずっとこうしていたい、胸に芽生えた小さな想いに私はハッとした様に遥斗の体を押す。



「ったく……キスしてる時くらい大人しくしとけよな」

「……」



不満そうな遥斗の顔を真っ直ぐに見ることが出来なかった。


私……何して……。
私には拓哉さんがいるのに……。


それなのに他の人とキスをしてしまった。
それだけならまだしも……。


もっと……していたい、そう思ってしまった。



「梓沙」



黙ったままの私を心配する様に遥斗の手が伸びてきた。

でも……。



「触らないで!!」



私は遥斗の手を払う。


遥斗に触れられたら私は……。
きっとおかしくなってしまう。


その気持ちが勝手に体を動かしていた。



「っ……」

「遥斗……?」



傷ついた様な遥斗の顔を見た瞬間
私の心は抉られるような痛みを伴った。
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