何でも屋と偽りのお姫様~真実の愛を教えて~
ただ……愛しただけなのに。


拓哉さんという人間を愛しただけだというのに。
なぜ私は柊家の操り人形と化さなければいけないのだろう。


膨れ上がる醜い感情は消えることはなかった。


それでも私が今まで耐えれてきたのは拓哉さんがいたからだ。


“拓哉さんが好き”


その気持ちだけで私は成り立ってきた。


でも……。
心に嘘をついてまで彼の傍にいたいかと聞かれれば……。


私は即答が出来ない。


柊家と関わる事で重ねてきた“嘘”が。
過去を捨て、自分を捨て、彼に相応しい人間になる為に纏ってきた何重もの仮面が……。


私には負担にしかなかった。


本当はもっと素直に生きたい。


“嘘”なんてつきたくないし、大嫌いだ。
家族や友人とだって会いたい。


愛した人を失いたくなくて必死だったあの時は分からなかった。


私は進んで孤独な道へと突き進んでいったんだって。


愛した人を得るために失ったものは大きすぎたんだって。
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