男の秘密
優の住んでいる所から近いとは思っていたが、本当に近かった。

自分の住居を探す際にこのマンションも調べていた事を思い出す。

セキュリティーがしっかりしていて、1フロアの部屋数が2つしか無く、その分1つの部屋の間取りは広かった。

そして、一人暮らしをするには大きすぎる部屋と、高すぎる家賃に直ぐに興味が無くなった事も思い出した。

『まさか、ここに忍さんが住んでたなんて』

15階建ての15階が忍の部屋だった。

この階には2部屋しか無く、どちらも専用のエレベータで部屋の前まで直通になっているので、同じ階でも一切顔を合わせる事が無い。

エレベータは専用のカードで開き、自分の部屋階以外は止まらない。

木で統一された部屋は、温かみはあるが、とても殺風景だった。

『生活感が無いわ』

キッチンスペースは広く使いやすそうだが、IHのコンロは使用された形跡がない。

リビングは大きいローテーブルと木戸が寝ても大丈夫な大きなソファーが一つ、壁にはめ込み式の棚と大画面のTVそれだけだった。

『奥に部屋が幾つあるのか分からないけど、そっちはここより生活感があるのかしら』

ふと、そんな事を考えてしまった。

「優。ソファーに座ってて。飲み物はコーヒーでいい?」

キッチンに入って眼鏡と帽子を外しながら優に話しかける。

その声に、まだ、玄関部分で立ち尽くしていた事に気付き、慌てて靴を脱ぐ。

「はい。・・・お邪魔します」

初めて男性の部屋に、緊張した面持ちでソファーまで進みソファーの隅っこに腰を下ろす。
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