男の秘密
「優。さっきの続き聞かせてくれないか」

「!」

忍が直ぐ横に座ってから、顔を見る事が出来ず、黙ったままコーヒーカップを見つめてしまっていた。

「え・・と」

必要以上に忍を意識してしまい、頭が真っ白になった。

「優にとって俺は友達?」

『しっかりしなくちゃ。忍さんに気持ちを伝えるって決めたんだから』

沈黙が暫く続いたが、意を決して顔を上げると、思いの外忍の顔が近かった事にびっくりした。

「!?」

忍と目が合って、言おうとした事が頭から抜けてしまう。

『落ち着かないと・・』

目を伏せてコーヒーカップを見た。

そして、コーヒーカップをテーブルに置きながら、気持ちを落ち着ける。

その間忍は優を急かせる事は無く、お陰で気持ちが落ち着いた。

「あの、前にも言ったんと思うんですが、私、友達は大学で知り合った羽奈しか居ません。
小学校から友達らしい友達も居ないままです。
だから、女友達も羽奈だけだし、男友達は居ません。
私にとって、忍さんが、友達として好きなのか、こ、恋人として好きなのかも、忍さんが告白してくれた時には分かりませんでした。」

顔を見て話すべきだと思うのに、顔をみると話したい事が飛んでしまうので、忍の胸の辺りを見ながら話す。

「そんな時、加藤君と幹事をする事になって、羽奈が・・加藤君と二人になって、忍さんとの気持ちの違いを考えたらって・・・
駄目だと思ったんですけど、どうしても分からなかったので、羽奈の提案に乗ってしまいました。
二人で出かけないで欲しいって、忍さんに言われた時も、忍さんの気持ちが分からなくて、自分に疚しい気持ちが無ければ大丈夫だと思ってました。」

自分で話しているうちに、その時の忍とのやりとりを思い出して、胸が苦しくなった。

少し視界が滲んできて、自分が泣きそうだという事に気づいた。
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