男の秘密
「昨日はごめん。話の途中で眠ってしまって・・・優にはカッコ悪いところばかり見られてるな」

苦笑しつつ立ち上がり、優の所まで来てくれた。

「いいえ、私の方こそ、眠ってしまって」

昨日の事を思い出すと顔が暑くなり俯いてしまった。

「朝ごはんの時間はある?」

忍の声に顔を上げるとTV画面のに表示されている時間が目に入った。

「あ、はい」

「じゃぁ洗面所の場所はこっち」

忍に案内されて入った洗面所もやっぱり、生活観の無いものだった。

歯磨きと洗顔を済ませてリビングに戻ると、コーヒーの良い匂いが室内に広がっていた。

忍に促され、ソファーに座り二人で朝食を食べる時も、ドキドキが止まらない。

『意識する前は、平気だったのに・・・』

美味しい筈のマフィンの味が全く分からない。

隣に座っている忍の顔が全く見られず、気配を感じながら黙々と朝食を済ませた。

途中忍が話しかけてくれたが、全く頭に入ってこなくて相槌を打つだけで精一杯だった。

『こんなので大丈夫なのかしら・・・』

家まで送ると言う、忍の申し出を断り、マンションの前で別れた。

自宅に戻っても、ふわふわした感じが消えず、暫くぼうっとしてしまい、危うく遅刻する所だった。
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