男の秘密
二人の時間がゆっくり流れていて、緊張が解れていく。

『ドキドキせずに話せるって事は、少しは慣れたのかしら。いつもドキドキしてたら身が持たないわよね』

自分の考えに苦笑してしまった。

そんな時、忍が立ち上がった。

「悪い、ちょっと電話してくる」

スマホを胸ポケットから取り出し、店の外に出て行った。

「あんた、忍の彼女か?」

忍が居なくなったのを見計らって、重利がそう聞いてきた。

「え?!」

まだ、彼女と言う言葉に慣れていない優は跳びあがる程ビックリした。

「なんや、ちゃうんか?アイツが女連れてくるの初めてやさかい、彼女かと思ったんやけど」

「あ、いえ、その・・彼女です」

これでもか。と言う位真っ赤になってしまい、重利の顔を見る事が出来なくなった。

「おぉ!そうか、そうか!やっとアイツにも彼女が出来てんな!」

我が事のように喜ぶ重利は沙織に日本酒を入れて貰い、一人で祝杯をあげていた。

『か、彼女って改めて言われると、本当に恥ずかしい。忍さんみたいに素敵な人が彼氏でいいのかしら』

そんな事を思った瞬間更に赤くなった。

『か、彼氏!忍さんが彼氏なのよね』

改めて反芻すると恥ずかしくなってしまう。

「やっとって事は無いですよ。あんな素敵な人なんですから」

自分の中から彼氏と言うキーワードを追い出すべく、そう話す。

「あぁ、ええ男やけど、色々あってなぁ・・・」

『色々?』
< 133 / 246 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop