男の秘密
「夏祭り楽しみね」

優が怯えている事を知って、明るい話題を振ってくれる。

「それを考えたら、緊張しちゃうからあんまり考えないようにしてるの」

それに答えるように、苦笑しながら明るく話す。

「後で感想を聞かせてね」

その言葉に器官に酒が入り、大きく咳き込む。

「か、感想って!な、何言ってるの?!」

呼吸が整って慌ててそういう優、この時もう先程の怖い思いは忘れている事には気づかない。

「あら、お祭りの感想よ。私最近お祭りに行ってないから」

意地悪い顔で優を見たので、からかわれた事にやっと気づいた。

「もう、意地悪なんだから」

少し拗ねたような顔をしながら、羽奈の気遣いに感謝する。

「落ち着いたし、そろそろ帰るわ。ご馳走様」

出された食事と酒を平らげてそう言うと、空いた器を流しに持って行こうと立ち上がる。

「今日は止まって行きなさいよ。着替えだってあるし、明日なら一緒に出勤できるわ」

「・・・そうするわ。ありがとう。」

好意に甘えるのは悪いと思ったが、今は一人になりたくないという思いが勝り、泊まる事にした。

羽奈のマンションは忍の所同様、一部屋が広く、豪華だ。

忍の部屋との違いは、キッチンが使われ居る事と、生活観がある事だろうか?

エントランスはホテルのロビーの様に豪華で、ここに来る時は凄く緊張する。

ゲストルームはほぼ優の為にあると言っても過言では無く、ウォークインクローゼットの中には優の服が何着もかけてあり、ベッドサイドの冷蔵庫には好きな酒まだ置いてある。

『お酒なんてこの部屋で飲まないわよ』

苦笑しつつ風呂を借りる為に部屋を出た。
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