男の秘密
「それよりもう直ぐね」

「もう、言わないで。思い出すと緊張しちゃうから。お陰で今日は全く緊張する暇が無くて、上手く言ったけど・・・」

大勢の人の前で歌ったり踊ったりするなんて出来ないと思っていたが、夏祭りの事を考えると全く緊張せずに出来てしまった。

「でも、そこを超えないと、先には進めないわよ」

「分かってるけど・・初めての事だから・・・」

「大丈夫よ。心配しなくても絶対上手くいくわ」

あっという間に飲み干した酒のコップを掲げて、おかわりを頼む羽奈を、少し恨めしそうに見つめた。

自分の体に自身のない優は、あれからジムや、エステにも通うようになった。

習い事ととは少し違うが、毎日忙しくしていて、帰りが遅い日にはタクシーを使う事にしている。

タクシーは痛い出費だが、背に腹はかえられなかった。

『ちょっとは羽奈に近づけたかしら・・・それは無いか・・・』

自嘲気味に笑いながら酒をごくごくの飲む。

『羽奈くらい綺麗でスタイルが良ければ、こんなに悩まないのになぁ』

優もおかわりを頼みながらチラリと羽奈をみた。

体のシルエットが綺麗に出ていて、同姓から見てもスタイルが良い。

性格も自分と違いサバサバしているので、きっとウジウジ悩んだりしないんだろうなぁと思った。

「優。忍さんが好きなのは、ナイスバディな女優でも、顔だけが自慢の女優でも無く優が好きなのよ。
もっと自身持ちなさいよ」

全てお見通しだとでも言うように、ふふふっとこちらを向いて楽しそうに笑う。
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