男の秘密
「斉藤さん、何かいい事あった?」

隣の席で、二つ年上の先輩の日置さんが訪ねて来た。

「え?いい事ですか・・・」

フイにかけられた言葉に少し驚いたが、いい事を思い出すと、顔が緩む。

「あぁ、やっぱりいい事あったんだ。それって彼氏に関係ある?」

好奇心で一杯の顔で優に聞いてくる日置は、普段からとても話しやすくて、仕事が確実で速い頼れる先輩だ。

ただ、噂話が大好きで、気になる事はドンドン聞いてくる。

「そんな事は・・・」

照れて真っ赤になりながら言葉を濁す。

「いいわね。幸せそうで」

ふふふっと笑って、深く突っ込まずに話を切り上げてくれるので、助かる。

『幸せそうな顔をしてるって事?』

自分では全く気付いていないが、優がかもし出す雰囲気は甘い。

加藤が見たら確実に騒ぎ出すレベルだが、幸いにも加藤は優の所に来なかった。

昼休みに、羽奈と約束していて、会社から少し離れたフレンチの店で落ち合った。

店内はOLやサラリーマンで賑わっているが、少し離れているお陰で、会社の人間に会うことがない。
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