男の秘密
優は顔を覗き込もうとして驚いた。

『この人、具合が悪いみたい』

男性の顔は見えないが、荒い呼吸が聞こえてくる。
そっと手を男性の額に当ててみる。少し汗んでいて熱もある。

『風邪?』

「大丈夫ですか?」

男性に向かい声を掛けるが意識が無い。

「大丈夫ですか?」

もう一度声をかけた時、男性の頭が動いた。

「あの、大丈夫ですか?熱があるみたいですから病院に行きましょうか?」
「いや、だい、丈夫だから・・・」

苦しそうに搾り出す声は低く掠れたている。

「でも、動けない程具合が悪いんですよね?」

その言葉に男性は体を起こそうとした。
状態を起こした所で力尽き、壁にもたれかかる。

「暫くこうしていたら、動けるようになるから」

『どうみても大丈夫そうに見えないし、暫くたったら動けるようにもならないように思うんだけど・・・』

このまま放置していいものか思案するが、このまま放置したら事態は更に悪化するように思えた。

「うち、近いんで休んでいって下さい。そうでなければ病院に連れて行きます」

病院の言葉にピクリと反応した男性は、優の方を見て少し考えた様子だった。

「分かった、君のうちで・・少し休ませて貰えるかな」

掠れた声がとても艶やかで、優はドキリとした。

「じゃぁ通りでタクシーを拾いますから、少し待ってて下さい。」

そう言って優は元来た方へ駆け出した。

男性はその後姿を眺めていたが、暫くすると意識を無くしたようで俯いた。


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