男の秘密
「実は夜用に肉じゃがを作ってたんです。 もしかしたら斎賀さんも食べられるかもと思って、多めに作ったんでどうですか?」

ふふふ。と幸せそうに微笑みながら忍の顔を見る。

「いや、でも、ずうずうし過ぎるだろ。ベッドを占領して、風呂を借りて、更に食事のおかわりまで・・」

「じゃぁついでって事で。今持って来ますから味見して下さい。」

困惑気味の忍に、くすくす笑いながら答えて立ち上がる。

『何かうろたえる姿が可愛い』
『自分よりも年上の、カッコイイ男性に可愛いと思う日が来るなんて。』

自分の考えに恥ずかしくなってきた優は、足早に部屋を後にした。

肉じゃがの出来栄えを確認して、器によそう。

『ご飯が必要ね』

先ほど使用したお茶碗を洗わなければ、使えない。

手早く茶碗や箸を洗って、準備を整える。

『お茶も必要よね』

全ての準備が終わって、部屋に戻ると、忍が本棚を見ていた。

最近はタブレットで本を読むので、本棚の本は少なめだ。電子書籍は持ち運びに便利だが、自宅で見る写真集等は、紙媒体が良い。

パッと見は扉式の本棚に、立てかけるように数冊の写真集が置いてあるだけだが、扉を開けると昔買った文庫本が入っている。

「お待たせしました」

美味しい香りに本棚からテーブルに視線を移した忍にそう声をかけ、食事の準備をする。

「本当に悪いね」

「いいえ。人と一緒に食べるの久しぶりなんで、楽しいです」

忍に気を使わせないようにか、本当にそう思っているのかそんな台詞をサラリと言って場を和ませる。

二度目の食事を楽しく過ごせたのは、そんな優の心遣いのお陰かもしれなかった。
< 21 / 246 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop