男の秘密
「お電話変わりました。斎賀忍です」

緊張して声が上ずりそうになるのを何とか押し込めて電話に出た。

「初めまして、斎賀君。椎名だ。」

「この度は、俺を指名して下さってありがとうございます」

「うん。その件だが、頼まれたから指名したんだ」

「え?どういう」

「今日君を7時に君を連れ出せと、姫からのお願いがあって」

電話の向こうで楽しそうに笑っている声が聞こえる。

「?」

「今日の打ち合わせ場所は・・・斉藤優さんの家だ」

「!?それは・・」

この内容は多分羽奈が言っていた事だと分かったが、羽奈と椎名社長の繋がりが全く分からなくて、困惑してしまった。

「姫は中々我々にお願いを言わないものでね。
 何年も付き合いがあるが、お願いされたのは今回が初めてだ。
 お陰で張り切ってしまったよ」

自分をホテルから連れ出す為に、契約をするなんてと、忍は驚いた。

「勿論、君事は調べたから、キチンとした契約だ」

「ありがとうございます」

何に対して礼を言っていいのか困るが、とにかく礼を口にする。

「時間厳守で頼むよ。あぁ、終了は何時でも構わないがね」

そう言って、話を切り上げて通話が終わったが、忍は今でも信じられなかった。

先日の電話番号の件といい、今回の仕事の件といい、羽奈の交友関係の広さに驚きを隠せなかった。

ただ、言われた通りに、事が進む事に感謝した。
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