男の秘密
「本当にありがとう。助かったよ」

食事が終わりひと段落ついた頃、忍がそう言った。

「いえ、大した事していないので」

時計が夕方の4時を指し示している。今日は昨日と打って変わって、暖かい日だ。

「そろろそ、帰るよ」

そう言って立ち上がる忍の後を追うように、優も立ち上がった。

「これ、斎賀さんの服です。」

何時の間に洗ったのか、綺麗に畳んだ忍のスウェットが紙袋に入っていた。

「何から何までありがとう。」

「いいえ。私も楽しかったです」
『初めての経験を沢山させて貰ったから』

これまでの出来事を思い出しながら楽しそうに話す。

「それで、お礼がしたいんだけど」
「え、いえ、そんなつもりじゃ・・・」

慌てて両手を振って断る。

「また一緒に食事がしたくて」

ジッと優の目を見て優しくささやくように言うと、免疫が出来たハズの心臓がドキドキ言い出す。

「ダメ?」

ちょっと伏目がちに言われると、何か悪い事をしているような気さえしてくる。

「い、いえ。そんな事は!」

「じゃぁ、今携帯持ってないから、連絡先を渡すから、連絡して」

嬉しそうに顔を綻ばせて話す忍に、優は「はい」と頷いていた。

連絡先を受け取り、忍を見送った優は暫く呆然としていた。

『生まれて初めて男の人の連絡先を貰ったわ』
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