男の秘密
買い物していないので食べるものが無い。

冷蔵庫の整理の為昨日全て使い切ったのだった。
今日をコンビニのお弁当で乗り切って明日にスーパーで食材を買うつもりだったのに、男性を拾った事ですっかり忘れていた。

『あぁ、あの道のりをもう一度コンビニまで行かないとダメなのかぁ。』

そう思うと憂鬱になる。

『何か・・食べるもの』

そう思い、乾物などを仕舞っている扉を開けて中を見ると春雨があったので、春雨でスープを作り今日をしのぐ事にした。

優の部屋には、ベッドの反対にある二人がけのソファーが置いてあり、そのソファーの横には本棚と机がある。

ソファーとベッドの間にはテーブルが有るが、ソファーに座るとテーブルが低くなるので、食事や趣味の絵を描く時は絨毯の上に直に座る。

同僚の羽奈(はな)との飲み会も同じように絨毯の上に座る。
その際には優はベッドにもたれかかり、羽奈はソファーにもたれ掛かって明け方近くまで飲み続ける。
このスタイルが楽でお互い気に入っていた。

いつもと違いソファー側に座って居る所為か落ち着かない・・・。

いや、座る位置だけの問題では無いのだろう。
目の前に見知らぬ若い男性が眠っているのだから。

『この部屋に全くあってないよね』

乙女の部屋とまではいかないが、男性の部屋よりは明るい色を基調にした、パステルカラーで統一されている。
パステルグリーンのソファーには、羽奈から貰った大き目のうさぎのヌイグルミが置いてある。

春雨スープを食べ終わり片付けをしてから男性の様子を見る。

少し体調が戻ったようで先ほどの苦しそうな表情が無くなり穏やかに眠っている。
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