男の秘密
『よかった・・。』

額に手を当てるとまだ熱いが先ほどより少し下がったようだ。

そこで気づいた。

『布団・・・無かったんだ』

男性の下には自分の布団、男性の上には来客用の布団。
寝る為の布団はもうない。

『毛布があるから絵でも描いて朝まで起きていようかな・・・』

そんな事を考えながら毛布を出して、冬用のコートを羽織り趣味の絵を描き始めた。

テレビを見ない優の部屋にはテレビが無い。
部屋でする事といえば、趣味のイラストや読書だ。

イラストを描くのに集中していると、掠れた声が聞こえた。

ハッとして声のする方を見ると、ゆっくりと瞼が上がっていく。

優は慌てて駆け寄った。

顔を覗き込むが瞳は虚ろで覚醒はしてないようだ。
声を掛けると覚醒を促してしまいそうで声がかけられない。

「傍に・・」

男性が掠れた声でそう呟き苦しそうに眉を潜め、手を伸ばしてきた。

「傍に居ますから・・大丈夫ですよ」

そう声をかけて男性の手に自分の手を近づけると手を握られた。男性は優の手を握ると安心したような表情になりそのまままた眠りについた。

暫くその寝顔を見ていた優だが、眠気が来たので手を離そうとした。

男性は眠っている筈だが、結構強く握っていて無理に離すと目覚めそうだ。
仕方なくその体制の男性を眺める。

顔立ちはとても整っており、端整な顔立ちだ。ドラマの俳優や、人気歌手にいそうだなぁと思った。
熱の有無を確認する際に触った髪は柔らかく、緩く癖のある茶色がかった髪だった。
前髪が長く立っている時は目元が影になって分からなかったが、先ほどの潤んだ瞳は艶やかで、優の心臓がドキドキしていた。
男性の顔を眺めているうちに睡魔に襲われ、優はそのまま眠ってしまった。
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