男の秘密
「このお店は何時からされてるんですか?」

お互いに喉も潤い、一息ついた頃、優が尋ねた。

「5年前からかな。
あいつ、子供の頃から父親の店を手伝ってたみたいで、学生時代によく腕を揮ってくれてた
卒業してからは、自分の店を持ちたくて、本格的に勉強をしてたな」

その頃を思い出すようにゆっくりと話す。

「25歳でお店を始めるなんて凄いですね。私、来年同じ年になるのに、何もやってないです」

苦笑しながら話す優。

世の中の25歳で起業する人数はそう多くは無い。むしろかなり少ないだろう。

その中の一人に入る事が出来るとは思っていないが、自分に何か身に付いただろうか?

「優には優のペースがあるし、自分のやりたい事をするのが一番だと思うよ」

忍の優しい眼差しに自分が卑屈になっていた気がして恥ずかしい。

「忍さんはやりたい事ありますか?」

「うーん。やりたい事はやれてるかな。優はやりたい事ある?」

「私は・・・絵が描きたいので、休みの日に絵が描けているから満足ですね」

友達付き合いの無かった優は、家の手伝いの合間に描く絵が趣味だった。

絵を描き始めると、時間を忘れてしまい、その度に祖母に叱られていた事を思い出す。
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