一途な御曹司に身も心も奪われ虜になりました
でも2900人中のたった4人。

優秀云々は別にしてそこまで目を付ける理由がほかにあるような気がした。


「野田専務の話は尽きないですね。でもせっかくのお料理が冷めちゃいます。いただきましょう」


里香は機嫌良くそう言うと耀にフォークを手渡し、食べるように促した。

でも肩で呼吸をし始めていた耀は苦しそうに胸に手を当て、受け取ったフォークをそのまま置いた。


「大丈夫ですか?」


そう聞くのと同時に耀は立ち上がった。


「すみません。ちょっとお手洗いに行って来ます。えっと…」


キョロキョロ見渡す耀に菅原くんが場所を説明した。


「階段暗いんで足下気をつけてくださいね」


菅原くんの言葉に耀は小さく頭を下げて行った。


「平気かな」


心配そうに耀の背中を見る菅原くんに同意する。


「具合悪そうだったね」


途中から度々顔色は悪くなり、気だるそうなそぶりを見せていた。

それでも里香との会話はきちんと成り立っていたからあえて口を挟まなかったけど、心配だ。


「ん、このお肉柔らかくて美味しい」


満足そうにお肉を頬張り、赤ワインを飲んでいる里香に聞く。


「ねぇ、里香。なんで野田専務の話なんて聞きたかったの?ていうか、耀さんと野田専務が知り合いっていつから知ってたの?」

「バーベキューの時に聞いてたから。だから会話のきっかけになればいいって思ったの。現に、耀さん、緊張してたでしょう?共通の話題なら気持ちがほぐれるんじゃないかってね」


そこまで考えていたなんて。
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