一途な御曹司に身も心も奪われ虜になりました
でも里香が言うほど耀は緊張してなかったと思う。

会話だってそれなりに弾んでいたし、笑顔だって見れた。

人付き合いが苦手には思えないほど、普通に。


「ていうか耀さん、遅くない?」


私が耀のことを考えていると、ふと里香が辺りを見渡した。


「俺、見てくるよ」


菅原くんが立ち上がり、階段を駆け下りて行く。


「彼、いい子ね」


去って行く菅原くんの背中を見ていた里香が言う。


「素直ですごく感じのいい子。美羽のこと慕ってるし」

「慕ってるって言うよりバカにされてるんだよ」

「それでも美羽のこと好きなのに変わりはないと思うよ」


好きだ、好きだとは言われているけど、言われ過ぎてて逆にバカにされてる感が否めない。


「そうかな。でも菅原くんも耀さんも美羽もみんな素直で良い人で、自分がダメな人間な気になるわ」


切なく微笑み、赤ワインをクイっと飲んだ里香だけど、そんな風に思っていたなんて思わなかった。

でもいい頃合いだ。


「耀さんのことどう思う?」


首を傾げる里香に端的に言う。


「恋愛対象として」

「あぁ。ハハ」


乾いた笑いのあと、里香はまた切なく微笑んだ。


「前にも言ったけど、耀さんは私に好意は持ってないし、万が一あっても、私は耀さんのように純粋なひとに相応しくないよ」

「そんなこと」


ないって否定しようとしたのを里香は首を振り、制した。

そしてまたワイングラスを手に取ると、赤ワインを眺めながら言った。


「私は見た目だけの女なの」


「どうしてそんなこと言うの?ていうか最近の里香おかしいよ。私、なにか気に触ることした?なにかあったの?」


さすがに聞かずにいられない。

訳の分からないことを言う里香に。

所々、喧嘩を吹っかけられるような言葉もあった。

いや、それは気にしないにしても、あまりに自分を卑下する言葉が多過ぎる。


「相談になら乗るから」


話して欲しい。

そう言おうとした時、スマートフォンの着信音が鳴った。


「菅原くん?どうかした?」


『耀さんがっ…』


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