一途な御曹司に身も心も奪われ虜になりました
それはその通り。

耀の体が最優先だ。

ただ本当に付いて行くべきだろうか。

自分から優に啖呵切っておきながらなんだけど、耀は自身のことについて話すのを躊躇っていた。

本人の話を本人から聞かないというのは気がすすまない。


「でもこれを逃したら前に進めないよ」


躊躇う私に気付いた菅原くんが私の耳元で囁いた。


「耀さんのこと、きちんと知らないと推進課に未来はない。社長の自宅に上がるのは恐れ多いけど、俺たちは行って話を聞くべきだ」

「そう…だね」


考えても分からない。

優が教えてくれると言うならそれに与ろう。

今、社長から私たちは試されている。

現在進行形で耀に相手を探しているのを見られて良いことはないけど、推進課の未来のために、そして耀のために、私たちが今、出来ることは優から話を聞くことだ。


「社長はご在宅ですか?」


車内で菅原くんが聞くと優は首を左右に振った。

「親父たちは今、旅行に出ていていないから気にするな。まぁ、こういう時だからこそ耀は外出なんてしたんだろ」


優は気になることを言う。

両親がいない時を見計らって出掛けるしかない耀とはいったい何なのか。

窓の外をぼんやり眺めながら一抹の不安を感じていた。

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