一途な御曹司に身も心も奪われ虜になりました
ミッション6中村耀の実態を把握せよ
「うわ!デケェ!」
菅原くんの言う通り、社長宅は想像をはるかに超えるほど大きかった。
二世帯住居と言っても同じ敷地内に二棟建てられている。
会長宅は純和風。
社長宅は洋風だ。
門から玄関までも長い。
飛び石を伝って玄関を目指す。
でも耀の体を支えながら歩く優は玄関へと続く階段は上らず、右に曲がり、建物の裏手に回った。
そこには母屋とは別のアパート様のモダンな建物が二棟建っていた。
「ご両親と別々に暮らしているんすか?」
耀の体を優と一緒に反対側から支えていた菅原くんの問い掛けに優は小さく頷いた。
「俺たちは中学の時から別々にここで暮らしてる」
大きな母屋が目と鼻の先にあるにも関わらずわざわざ別棟で暮らす意味が私には皆目検討つかない。
それでもこの建物での生活こそが耀のことを知る重要な手掛かりだと思った。
様子を伺う私の前で優は玄関の鍵を開け、菅原くんと一緒に耀をベッドまで運んだ。
「ふたりも入れよ」
「あ…し、失礼します」
遠慮しつつ入ると中の間取りは一般的なアパートと遜色なかった。
もっとも室内は20畳近い広さ。
しかもベッド以外なにもないキッチンなしのワンルームだ。
「適当に座れ」
そう言われても腰掛ける場所に困り、立ち尽くす私たちを見て、優はカーテンを開け、窓を開けた。
するとそこには中庭があった。
表側からは分からなかったけど、家の形はコの字形だったようだ。
「不思議な家ね」
框に置かれていた外用のスリッパを履いた里香がグルリと辺りを見回している。
私もそれに倣って辺りを見回すと、対面式にある耀と優の部屋を繋ぐ廊下部分には端から端まで棚があり、そこにはびっしりとたくさんの本が並んでいた。
一生かけても私には読めない程の量にふたりの知識量を見た気がした。
「あ、ねぇ、美羽見て」
本棚かれ里香の方を見ると、里香は吹き抜けになっている頭上を見ていた。
「星が見える。綺麗」
「ほんとだ」
都会で見れる星の数には限りがある。
それでも二等星から三等星の輝きは見えた。
「気に入ったか?」
優の声に視線を下げると、夜空を見上げる里香を彼は見ていた。
その瞳は優しく、私に向けられた訳でもないのにドキッとしてしまった。
視線に気付き、その視線と交えた里香には相当な破壊力だっただろう。
パッと顔を背け、顔を隠すようにしきりに髪を触っていた。