一途な御曹司に身も心も奪われ虜になりました
優サイド
耀はエンパス体質の人間だ。
エンパスとは共感能力のことを言い、その能力が異常なほど高い耀は他人の感じていること(喜び、悲しみ、嫉妬、嫌悪、怒りなど)を自分のことのように感じてしまい、相当な疲労に見舞われる。
中でも耀が苦手とするのは、内面は妬みや怒りで満ち溢れているのに表面では偽りの姿を見せる人や、自分の性格を偽り、別の性格を作り上げている人だ。
そういう人と1時間以上一緒にいると訳の分からない恐怖心に襲われるらしい。
体が怠くなり、頭が痛くなり、具合が悪くなる。
幼い頃から慢性的な疲労感に苛まれてきたのはこれが原因だった。
でも俺はエンパスなんてものは知らなかった。
そもそも耀自身、エンパスだと分かったのは小学校高学年の頃だ。
だからそれまでいったい耀の体になにが起きているのか全く分からなかった。
当然、親は心配した。
いや、親が耀を心配していたのは生まれた頃からずっと、か。
一卵性ではなく血液型さえ違う二卵性の双子で、耀は俺よりも圧倒的に小さく産まれた。
そのせいで耀は幼い頃から病気がちで、母親はいつも耀の側にして耀のことばかりを心配していた。
それは仕方のないことだ。
苦しむ耀を見て『ぼくを見て』なんて言えるわけもなく。
幼心にも我慢を覚えていた俺は親に構って欲しいと言ったことも、そういう素振りを見せたこともない。
いつか俺のことも見てくれる。
その時のために、いつ見られてもいいようにいい子でいようって決めていた。