一途な御曹司に身も心も奪われ虜になりました
でも俺は間違っていた。

いい子でいればいるほど手がかからず、親は放っておいても大丈夫だと思い始めるものなのだ。

幼稚園に入園しても、小学校に入学しても、ふたりは俺を見てくれなかった。

どれだけ優秀な成績を取ってもダメだった。

頭脳では耀に勝てなかったからだ。

病気がちで家にこもることが多かった耀は読書に明け暮れており、そこで得た知識は同い年の友達を圧倒的に凌駕していた。

芸術の才能もあり、絵画、習字はコンクールで入賞、ピアノは一度聞いただけで音を覚えられる絶対音感を持っていた。

そこに女性的で綺麗な顔立ちが加わるのだから向かう所敵なしで、親や身内が可愛がるのも当然だった。

俺だってそこそこ頭は良かったし、顔立ちもスタイルも良くて、運動も出来て、女子にはモテるのに、 俺は耀の前ではいないも同然だった。

こうなると開き直って悪さをすることしか注目を集める方法を思い付かない。

あれは小学四年の頃だったと思う。

上級生と一緒に学校の窓ガラスを派手に割り、壁に落書きした。

でも全て親の力でもみ消され、お咎めはなし。

呼び出されることも、怒られることもなかった。

ここまで無関心でいられるとさすがに心が無になる。

俺ってなんなんだろう。

耀は体が弱いからって我慢してたけど、いったいいつになったら、なにをしたら俺に目が向くんだろう。

誰にも気に留めてもらえない俺はこの世にいる意味があるのだろうか。

いなくてもいいんじゃないか。

いなくなっても誰も気付かないんじゃないか。

10歳にしてその考えにたどり着いた俺は楽に死ねる方法まで考えていた。

そこまで俺は病んでいた。
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