一途な御曹司に身も心も奪われ虜になりました
困らせたいわけじゃないのに。

微妙な空気だけが家の中に充満していた。

その中で耀だけが俺の側にいてくれた。


『不思議なんだ。僕、兄さんの気持ちが手に取るように分かるんだ。だから兄さんが寂しいとか悲しいとか不安なときは僕が側にいるよ』


青白い顔をしながら微笑んで見せる耀を見て俺は何してるんだと思った。

体が弱くて自由に遊び回ったりすることも出来ない耀の方がよっぽど辛いのに。

結局、俺は自分のことしか考えていなかったんだって改めて思わされた。


『俺、強くなるよ。耀が俺を守ってくれたみたいに、今度は俺が耀を守る』


それから俺は出来るだけ耀の側にいて、耀に学校であった話や、流行りのもの、時に恋話なんても話すようになった。


『いいな。僕もみんなと遊びたい。恋もしてみたいな』

『耀ならモテるからすぐ彼女出来るよ。早く良くなるといいな』

『うん』


耀の笑顔は弱々しかったけど、俺たちは良好な関係が築けていた…と思っていた。


だがある日突然親に言われたんだ。


『耀とはなるべく関わらないようにしてちょうだい』


は?

この親は何言ってるんだ?


『耀はこれから別棟で暮らすから』


耀をひとりで?

何故?

困惑する俺に父親が静かに教えてくれた。


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