一途な御曹司に身も心も奪われ虜になりました
幼い頃から迷惑をかけてきた親へのせめてもの恩返し。

研究の道を選んだのはひとりでできる上に、食品会社の発展に貢献出来ればと思ったから。

事実、耀はひとりで研究を進めている。

もっともそんなワガママ、他社では受け入れられなかっただろうから家族経営の自社に入社したことは強ち間違いではなかったのだろう。


「でも同社入社したらおふたりは社長の席を争うことになりますよね?」


菅原くんの質問に優は首を左右に振った。


「いや、耀は後継者にはならない。それは祖父母を交えて話してえる」


『僕は体質上、人と関われない。恋愛も出来ない。だから会社の表舞台には立てないし、子孫を残すことも出来ない。全ては兄さんに任せる』


なんてこと…

それを口にしなければならなかった耀の気持ちを考えると胸が苦しくなる。

優も同じなのか、表情は暗い。

でも大事なことを聞かなければならない。


「優さんはその耀さんの希望を叶えようとしている。でもその相手がなぜ里香なんですか?里香のこと、本当に好きなんですか?」


ハッキリと聞くと優は里香の方を見て言った。


「俺は耀を助けてはやれなかった。ひとりぼっちの耀を見るのはすごく辛かったが、その辛い気持ちを整理出来ないうちに耀に近付けば耀が具合悪くなりかねないと思っていたから。その中で人目も憚らず、耀を助けてくれたきみに惹かれた」

「そんな…私はそんなに褒められた人間じゃないんです。私は…」


言葉に詰まった里香だったけど、少しの間のあと、ガバッと頭を下げた。


「ごめんなさい。耀さんの具合が悪くなったのはすべて私のせいです」

「里香?何言ってるの?」


顔を覗き込むようにして様子を見ると里香の体は小刻みに震えていた。


「ごめんなさい。私がいけないの。私が耀さんの苦手とするタイプそのものの人間だから。耀さんの体を蝕んでしまった…」



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