一途な御曹司に身も心も奪われ虜になりました
あれは先輩が辞めて間もない頃。

重役が集まる飲み会の席で私は人事部の部長の隣に座らされ、お酌をしていた。

そしてだいぶお酒が進んだ時、ふとその部長が先輩のことについて触れてきたのだ。


『きみは世話になった先輩の男をも手に入れる程したたかなんだってな。まぁ、辞めた先輩とやらにはかわいそうだけど、あの顔で受付はないと思っていたからちょうど良かったよ。次に来る子は美人のきみに対して可愛い子だから』


ナニイッテンノ。

私のことだけならまだしも、先輩を悪く言う部長にカチンときた。


『先輩はとても仕事の出来る方でした』


言えた立場になかったけど、先輩の名誉のために反論した。

でも笑って一蹴されてしまった。


『実力なんて受付には要らない。そもそもきみが入社出来たのだって受付に座る見た目のいい人材が欲しかっただけだよ』


ナニソレ?

私にはこの見た目以外に使えるものがないって?


『ははは』


乾いた笑いが口から出た。

だってハッキリと言われたら虚しくて、笑顔を浮かべて受付に立つ自分が情けなくなったんだから。

笑うしかなかった。

でもそれさえ許されない。
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