一途な御曹司に身も心も奪われ虜になりました
しばらくはなんとか耐えていたけど、あの人を巻き込んでしまったことと、あの人に"女性から嫌われる子"だと思われるのが耐えられなくて、心が弱ってしまった。

見兼ねた美羽が私のそばにひと月近くいてくれるようになり、男性からも女性からも守ってくれて、仕事もフォローしてくれたけど、美羽がそばにいてくれたことを嬉しいと思えたのははじめの2日くらい。

その後はただただ苦い思いをした。

美羽があんなに優秀だとは思っていなかったのだ。

それまで推進課なんて変な部署に配属されているのは他部署では戦力にならないから、って思っていた。

でも、全然違った。

美羽はまず、体力と筋力と忍耐力がある。

受付という狭い空間にも関わらず、ずっと姿勢正しく座っていることに苦痛を感じない。

私なんて入社当初はお尻が痛くて無駄に席を立ったりしていたのに、美羽に余計な動きは一切なかった。

たまに届け物をする時に席を外すことがあったけど、その時でさえ所作が綺麗で抜け目なかった。

礼儀やマナーも完璧。

推進課で他部署に足を運んでいるだけあって知り合いが多く、記憶力もいいから名前と顔と役職名までしっかり覚えている。

同時に複数人の来訪者があった時、部署名もなく名前だけを言われて混乱する中、美羽だけが適確に捌いたときには度肝ぬかれた。

私はただ『〜課の〜さんにーさんが来ています、と連絡して』と美羽に言われるがまま電話を取り次いだだけだった。
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