一途な御曹司に身も心も奪われ虜になりました
本来なら私がそれをしなければならないのに、立場が逆転していて、誰も私を視界に入れなくなった。

それが悔しくて、美羽を超えなきゃいけないって思って、あの人に言われた『容姿も実力のうち』というのを思い出し、気持ちとともに落ちていたメイクを直し、笑顔を向けるように心掛けた。

そうすれば自然と目は美羽じゃなくて私に向く。

今までは見られることが嫌だったのに、美羽に負けると思ったら対抗出来る自分の武器はそれしかなかった。


『きみが入社出来たのは受付に座る見た目のいい人材が欲しかっただけだよ』


ああ言われた時、悔しくて掌を握り締めたのに、結局、自他共に認められるのは容姿しかなくて、そのことに気付かされたときは情けなくて笑えてきた。

そして吹っ切れた。

私のことを敵だと思うなら思えばいい。

この容姿に嫉妬すればいい。

他の人がどう思おうがそんなことどうでもいい。

好きな人に綺麗だな、素敵だな、と思ってもらえればいい。

あの人が褒めてくれたこの笑顔と美羽にはない美貌を武器にして。

いつかあの人には恩返し出来るように秘書検定の上級試験の勉強を始めた。

あの人の側に行くために。

秘書検定を持つ美羽を出し抜くために。
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