一途な御曹司に身も心も奪われ虜になりました
そんな折、チャンスが巡って来た。

今まで一度も参加して来なかった婚活イベント。

そこに野田専務の秘書の方が参加すると言う噂を聞きつけた。


『寿退社して辞めたいらしいわよ』


食堂で偶然聞いたその話にテンションが上がった。

タイミングよく美羽からイベント参加への話をもらった時には内心ほくそ笑んだ。

ただ耀さんと関わったのは間違いだった。

初めに彼を助けたのは野田専務の秘書の方の目に留まるため。

あわよくば野田専務に『素敵な子がいた』と言ってもらうため。

その思惑は上手くいきそうだった。

ただ2回も助ける必要はなかった。

アピールが過ぎた。

でもいじめられている耀さんを助けたのはアピールのためじゃない。

私は彼の姿にいじめられていた自分の姿を重ねてしまったのだ。

いじめられているのを分かっていながらヘラヘラ笑う耀さんを見るのが嫌だった。

イラついて、でも助ける方法が分からなくて。

仕方なく私が代わりになって飲んだ。

どす黒い感情を抱いたまま、私もヘラヘラ笑って飲んだんだ。

あの時、耀さんが倒れたのはアルコール中毒のせいじゃない。

今日もそう。

美羽ばかりもてはやされていたのが気に食わなくて、わざと素っ気ない態度を取った。

ドロドロの感情。

耀さんはこれに触れてしまったせいで倒れたんだ。


< 124 / 194 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop