一途な御曹司に身も心も奪われ虜になりました
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「ごめんなさい」
全てを話した里香は泣きながら寝ている耀の方に向けて頭を下げた。
「ごめんなさい、ごめんなさい」
「里香…」
声は掛け、手を伸ばしてみるけど、今の話を聞いて里香に触れることは出来ない。
里香が私に対して劣等感を持っていたなんて気付きもしなかった。
むしろ劣等感を感じるのは私の方だ。
仕事云々ではなく、容姿に雲泥の差がある私と里香。
どれだけ笑ってみせても明るく振舞っても初めて会った人の視線は必ず里香へ向く。
私なんて目もくれない。
その状況に慣れたとは言え、あからさまに比べられるのは辛いものがあった。
「美羽ちゃん、大丈夫?」
俯く私の肩に菅原くんの手が触れた。
その暖かさに目頭が熱くなる。
手で涙を拭うと優が小さくため息を吐いた。
「これで分かっただろ?耀と関わるなと俺が言った理由が」
視線を上げ、優を見ると、彼は耀を見て言った。
「耀と関われば心の内を曝け出されてしまう。本来、そんなの隠しておけばいいものなのに。親が耀を隔離したのは治療のためだけじゃない。看病に疲れた気持ちを察しられてしまうのを恐れたからだ」
「優さんは大丈夫なんですか?」
菅原くんが優に問うと、優はフッと小さく笑った。
「だから俺も耀にはなるべく近寄らないようにしているんだ。俺のせいで具合悪くさせるわけにもいかないし、負の感情ばかり抱いている俺のことを気付かれて、耀に嫌われたくなかったからな。耀は俺の命の恩人だし」
でもそれなら本当に耀はひとりきりになってしまう。
そんなのあまりに可哀想だ。
あんなに楽しそうに、嬉しそうに笑うのに、ひとりじゃ笑えない。
誰かと笑い合うことさえ出来ない。
「そんなの…」
辛過ぎる。
「美羽ちゃん?大丈夫?」
菅原くんが私に心配そうに声を掛けてくれた。
でも大丈夫じゃない。
ひとりきりの耀を想像するだけで心が壊れそうなくらい痛む。
なにか方法を探すべきだ。
人と関わりたくないと心から思っていないのなら尚更。
「解決策なら…」
そう呟いた菅原くんの方を勢いよく見ると目が合った。
でもパッと逸らされてしまった。