一途な御曹司に身も心も奪われ虜になりました

「そこは問題ないです。今回はテニスにするつもりですので」


課長はそう言うと私の方を見た。

それで合点がいく。


「私が指導すればいいと言うことですね?」

「えぇ。お願いできますか?」


課長の言葉に首を縦に振る。


「もしかして美羽ちゃん、指導員の資格まで持ってんの?」


菅原くんが驚くのは無理もない。

今までテニスイベントはやって来なかったし、この資格を持っているという話をしたことも中学から大学までテニスを続けていたことも話したことはないから。

一応、その道ではそこそこ有名な選手だったから名前を知っているひとはいるかもしれない。

でもあえて話すほどではないし、結果的に夢を諦めた人間だ。

ただ資格だけはと思って日本テニス協会から推薦をいただき、実技試験、講習をパスしてきちんと指導員としての登録を済ませておいた。

それが役に立つのは純粋に嬉しい。

早速、知り合いに声を掛けたら快く屋内のテニスコートを借してくれることになったし、イベントの連絡も課長がメールにて配信してくれた。

参加者も着々と集まってきている。
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