一途な御曹司に身も心も奪われ虜になりました
「疲れたー」
コートの上で仰向けになって寝ている菅原くんにスポーツドリンクを手渡し、隣に腰掛ける。
「本当にテニスの経験ないの?」
「ん?あぁ、高校の時、少しやったかな」
寝たまま答えた菅原くんを横目で見下ろしながらスポーツドリンクを一口飲み、「納得」とだけ言う。
「共通の趣味があるのは良いことだよね。どう?俺と付き合わない?」
ニヤリと微笑み、私の顔を下から見上げてくる菅原くんの脇腹を突く。
「なに言ってんの。前にも言ったけどそんな風に色んな人に愛想振りまいてると本当に好きな人に信用してもらえないよ。他の誰かに奪われちゃっても知らないからね」
「あー…うん。そうだね」
珍しく素直な菅原くんの返答に驚き、隣を見れば空を見上げていた。
静かな空間に菅原くんは真っ直ぐ誰かを想い、夜空を見ている。
その先にいるのは誰なのだろう。
誰って聞いてみてもいいのかな。
「ねぇ、菅原くん」
「美羽ちゃんさ」
声が重なった。
夜空から菅原くんに目をやれば、彼も夜空から私に視線を移していた。
「ごめん、どうぞ」
菅原くんに先に話すよう手で促す。
すると菅原くんはまた夜空を見上げるとフッと笑い、ガバッと起き上がった。
「やっぱいいや。それより来週のテニスイベント頑張ろう!」
「あ、うん。そうだね」