一途な御曹司に身も心も奪われ虜になりました
「おはようございます。本日はご参加ありがとうございます。挨拶もそこそこにこの後すぐに簡単な自己紹介、そして練習と続きます。が、その前にひとつ」
そこで区切った課長は私の姿を探し、アイコンタクトをしてきた。
それに応えるように頷き、田辺さんと一緒に参加者全員の前に出る。
「こちらは田辺久美さんです。ご存知の方もいらっしゃるかもしれませんが、耳が聞こえません」
「え?耳が聞こえなくても出来るものなの?」
課長の紹介に騒つく参加者を鎮めるように私が代わりに大きな声で答える。
「耳が聞こえないプロのテニスプレイヤーは実在します。それにどこが悪いから出来ない、なんてことはありません。ただ少しだけみなさんのフォローが必要になります。それと皆さんの優しさも。どうぞよろしくお願いします」
頭を下げると空気を読んだ田辺さんも参加者の方に頭を下げた。
その後、自己紹介も早々に練習に入る。
「初心者の方はこちらにお願いしまーす!」
初心者の方がこの後に続く試合で足を引っ張らない程度の指導を短時間に行う。
でも…