一途な御曹司に身も心も奪われ虜になりました

「みなさん、私の方を見てくださーい」


そう声を掛けても参加者の方々の視線は田辺さんに集まっていた。


「あの子、上手いね」


ボール出しの菅原くんのボールを的確に、かつ美しく返している。


「それに楽しそう」


ニコニコと笑みを浮かべながらラケットを握り締め、ボールを打つ順番を待つ田辺さんは
心から楽しんでいる感じが伝わってくる。

それに上手く返した人には拍手も送っているため、それに釣られて他の方も拍手をするようになった。

田辺さんの存在ひとつで場に一体感が生まれている。


「どうなることかと思ったけど良かったね」


蓮見さんの言葉に課長が頷き、練習時間の終了を告げた。


「一旦、集まってください」


課長の掛け声に全員が集まった。

そこから男女を各3人ずつの4チームに分ける。
今回は特別な思惑がないため、公平を期し、くじ引きで決めた。


「チーム内でのペアは自由に決めてください」


課長の声にざわつきが起こる。

ペア組みはかなり重要だ。

仲良くなる確率がグッと上がる。


「よろしくお願いします」


田辺さんとペアになったのは190センチ近い身長の元木さんだった。

あまりに凸凹の身長差に大丈夫かと心配になる。

でも元木さんは明るく優しい男性で、話すときは田辺さんが口元を読みやすいように身を屈め、田辺さんが話したいと見受けられたら手のひらにひと文字ひと文字書かせてはくすぐったいと笑っていた。
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