一途な御曹司に身も心も奪われ虜になりました
田辺さんの顔をこちらに向かせてゆっくりとした口調で問い掛ける。


「あなたの気持ちはどうなるの?それでいいの?好きなら好きでいいの。ハンデだって気にしないの。それはあなたの武器なんだから」


女性が男性へよく見られるために性格や見た目を取り繕うのと何ら変わりない。

元木さんが受け入れてくれるならその胸に飛び込めばいい。

諦めることなんてない。

我慢することはないんだ。


『私は耳が聞こえない分、ずっと人の顔色を伺って来たんです。嫌な顔されたり、私のせいで傷付いたり、何を言われているのか分からない顔をされるのは普通に嫌なんです』


田辺さんの文字を読んで耀の顔が脳裏をよぎった。

人の顔色を読む田辺さんと、人の気持ちが分かってしまう耀。

ふたりは似た者同士だ。


「今まで恋愛は?」


メモを取り、田辺さんに聞くと話すか少し迷ってから気まずそうに笑い、ペンを取った。


『文章だけのやり取りなら誰にも気にかける必要がなかったので、チャット恋愛をしてました』


つまり出会い系サイトに登録して、テキスト上で会話を楽しみ、擬似体験をしていたということか。


『2ヶ月後には互いの顔写真を送りました。その翌月、直接話しがしたいってメールが来て。正直に耳が聞こえないことを伝えたんです。そしたら…』


結末を書く手を止めた田辺さんからペンとメモを取る。


『田辺さんは自身のことを知って貰った上で恋愛したくて参加したのね?』

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