一途な御曹司に身も心も奪われ虜になりました
『また今度のイベントで頑張ります。それかいい人がいたら紹介してください』
田辺さんの去り際のメモを握り締める。
やり切れない気持ちを抱えながら片付けをしていると、側に課長がやって来た。
「後半、田辺さんは彼を避けるようにしていました。あれでは他の女性を選んでも無理ないです」
ポンと肩に置かれた手は優しく、私のせいではないと言っている。
終わってみればカップル成立率は70%。
いつも以上に満足のいく結果が得られた。
でも私は田辺さんに笑顔で帰って欲しかった。
次、なんて言わずに。
「美羽ちゃん。ちょっとお茶してから帰ろうよ」
不完全燃焼の私に菅原くんがお茶に誘ってくれた。
課長夫婦と別れて最寄駅近くの喫茶店に入る。
「アイスコーヒーとフルーツタルトをふたつ」
店員さんに頼み、先に持って来てもらったお水を口にして窓の外に顔を向ける。
すると菅原くんがフッと鼻で笑った。
視線だけ前に座る菅原くんに向けると、彼は両手で頬杖をついて上目遣いに私を見た。
「なに?」
「いや、美羽ちゃんってよく悩むな、と思って」
褒められてる訳ではない。
でも事実過ぎて反論は出来ない。
黙っているとアイスコーヒーが届いた。
そこにミルクとシロップを入れてストローでクルクルかき混ぜる。
カラカラという氷がグラスに当たる音が心地良い。
ふと思ったことが口に出る。
「恋愛ってなんで上手くいかないんだろう」
「簡単に上手くいったら別れるのも早くなるからじゃない?恋い焦がれる時間が大事なんだよ」